第1話『二代目の帰朝』
京都には人間と狸と天狗が暮らしている。狸の矢三郎は、師匠である大天狗の赤玉先生の世話をするため、ボロアパートに通う日々を送っていた。そんなある日、矢三郎はツチノコを探しに弟の矢四郎と如意ヶ嶽山中へ繰り出すのだが……。
第2話『幻術師 天満屋』
慌ただしい一夜が明け、骨董屋で達磨を磨きながら店番をしていた矢三郎は、骨董屋の主人・忠二郎から急な仕事を頼まれる。矢三郎が寺町通商店街にある紳士服屋の事務所にあがると、作業通路の先にひとつの小屋が建っていた。
第3話『欧羅巴の香り』
初夏の山道。蛙の姿のまま狸に戻れなくなった次兄・矢二郎を治すための薬を祖母に調合してもらうため、矢三郎と母は狸谷山不動院へと向かっていた。参道の入り口に到着した母は懐かしそうに石段を見つめるのだった。
第4話『狸将棋大会』
弁天の帰国、二代目との激突の報が狸界隈で盛り上がる中、もうひとつ話題に上っていたのは長兄・矢一郎が復活させた南禅寺狸将棋大会だった。亡き父・総一郎から将棋を教わり、兄弟で唯一腕が立つ矢二郎は将棋大会に出場することに。
第5話『続・大文字納涼船合戦』
矢一郎と玉欄の仲を取り持った矢三郎だが、新たな問題が浮上する。それは毎年恒例となっている“五山の送り火”を空中から見物するための船がないことであった。矢三郎は俺にまかせろと、赤玉先生のアパートへと向かう。
第6話『有馬地獄』
かつては金曜倶楽部に所属していたが、矢三郎たちの母を救い出し、今では「狸鍋廃止!」を訴える対抗勢力「木曜倶楽部」を設立した淀川教授。そんな教授の陣中見舞いに訪れた矢三郎は、金曜倶楽部の会合が有馬温泉で開かれることを知る。
第7話『金曜倶楽部、再び』
地獄から生還した矢三郎は、弁天と共に寿老人の電車で行われる金曜倶楽部の会合に出席することに。宴席前に地獄の臭いを落とすことを勧められた矢三郎が露天風呂に入ると、そこには金曜倶楽部のメンバー、そして淀川教授の姿があった。
第8話『夷川海星の秘密』
有馬温泉での一件後、夷川家の偽電気ブラン工場では夷川早雲の葬儀が執り行われていた。事情を知らぬ狸たちはいろいろな噂話をしていたが、母は遠い目をしながら、ぽつりと早雲が夷川家に婿入りしたときのことを話し出す。
第9話『それぞれの二代目』
京都駅で矢二郎を見送る下鴨家の兄弟たちと玉瀾。だがそこに母の姿はなかった……。兄が旅立ち少し感傷的な気持ちになる矢三郎の元に、赤玉先生が狸界の頭領を決める偽右衛門選挙の立会人を拒むという、新たな問題が舞い込む。
第10話『偽右衛門の決まる日』
偽右衛門選挙に先だってのへそ石様へのご挨拶の日。矢三郎は弁天と二代目の一触即発の危機をなんとか回避させるも、弁天の逆鱗に触れ、その身を隠すことになる。一方、旅に出た矢二郎は四国へ渡り、金長一門の元へ向かうのだが……。
第11話『天狗の血 阿呆の血』
京都狸界を束ねる偽右衛門の決定の日。矢一郎は玉欄、重鎮の狸らと共に、立会人である二代目の邸宅に集まっていた。一方、偽電気ブラン工場で働く矢四郎から緊急の連絡を受けた母は、夷川発電所へと急行する。
第12話(最終回)『運命の赤い糸』
京都の制空権を寿老人と奪い合う矢三郎の背に弁天の手が伸びる。「いいかげんになさい、矢三郎」。弁天におさえこまれ万事休すかと思われたそのとき、矢三郎の目に映った灯とは……。錯綜する陰謀と騒乱をごちゃ混ぜにした鍋が湯気をあげる。面白きことはよきことなり。