第1話『雨音(あまおと)』
女子高生・橘あきらがバイトしているファミレスの店長は、万年店長の冴えない中年男・近藤正己。店員に威厳を示せず、客のクレームにはペコペコ頭を下げる・・・そんな、何をしても決まらない近藤を鋭く見据えるあきら。自分を蔑むようなあきらの表情に密かに凹む近藤。絶対に交わらない二人の視線が交わった時、17歳と45歳の人生が色鮮やかに変わり始める――
第2話『青葉雨(あおばあめ)』
客の忘れ物を届けるために走り、足を痛めたあきらはしばらくバイトを休むことに。足を庇いながら生活するあきらだったが、怪我の痛みよりも近藤に触れられた場所が熱を帯び気になってしまう。一方、あきら不在のガーデンであきらの過去を知る近藤。そして、見舞いにきた近藤と思いがけず二人きりになったあきらは、ふと・・・
第3話『雨雫(あめしずく)』
近藤に想いを告げたあきら。しかし近藤はそれを告白だとは受け止めていない。陸上部の後輩たち、親友のはるかともうまく関われず、胸にモヤモヤを抱えたままのあきらは再び想いを伝える。「あなたのことが好きです」ただただまっすぐに自分に向けられる17歳の眼差しに、ついに近藤が口を開く―
第4話『漫ろ雨(そぞろあめ)』
近藤とデートすることになり浮かれるあきら。しかし、ひょんなことから加瀬に近藤への想いを知られてしまう。秘密にするかわりに・・・と加瀬がだした条件は、『デートすること』。仕方なく出かけるあきらに加瀬は言う。「君と店長はうまくいかない、絶対に」そんななか・・・とうとうあきらと近藤のデートの日がやってくる――
第5話『香雨(こうう)』
勇斗を近藤の家まで送ることになったあきら。しかし近藤は不在、家で待つことに。部屋には沢山の本や書きかけの小説・・・新たに触れる近藤の一面に、あきらは胸をときめかす。そこに響く近藤の足音。近藤を驚かすという勇斗の提案で、押し入れに隠れるあきらだったが――
第6話『沙雨(さう)』
うだるような暑さの夏休み。補習を受けるあきらは、偶然会った陸上部キャプテンのはるかと久しぶりに一緒に登校することに。部を離れたあきらとの友情の行方を確かめたいはるかだったが、話を切り出すタイミングをうかがっているうちにバスは学校に着いてしまい、二人それぞれの道へ。そして突然降り出した雨の中、あきらは立ち寄った図書館で偶然にも近藤と出会い・・・。
第7話『迅雨(じんう)』
大学時代の仲間・ちひろが書いた小説のことが仕事中も頭から離れない近藤。そんな近藤との距離を縮めようと、本の話題を切り出すあきら。高揚するあきらの心とは裏腹に沈んでいく気持ちを抱え、近藤はあきらを拒絶するような言葉を発してしまう。そして、ショックを受け消沈の日々を過ごすあきらは風邪で寝込んでいる近藤を想い、台風の最中あることを決意する――
第8話『静雨(せいう)』
嵐の中、近藤に抱きしめられたあきらは二人の関係を『友達』だと言う近藤にモヤモヤとした気持ちを抱えていた。『友達』を好きに変えたいあきら。しかし何をしたらいいのかがわからない。そんなある日、近藤と羅生門について意見を交わし合ううちに、何かを変えるきっかけは自分の中にあるのではないかと思い始めるあきら。そしてあきらは思い切った行動に出る・・・。
第9話『愁雨(しゅうう)』
はるかを夏祭りに誘ったあきら。以前の様に笑いあったのも束の間、押さえていた気持ちがぶつかり合い、二人は喧嘩別れをしてしまう。一方、近藤はちひろと十年ぶりに再会し、酒を交わしながら小説漬けだった大学時代の話に花を咲かせる。友と向き合い始めた近藤。友に背中を向けてしまったあきら。それぞれの痛みを抱えた二人はガーデンで顔を合わせる――
第10話『白雨(はくう)』
『友人としてオススメの本を教えてもらう』名目で古本市にやって来たあきらと近藤。しかし近藤は本に夢中であきらをほったらかしにしてしまう。文学に恋をして、追いかけて、追いかけて、周りの人を傷つけてきた。そしてまたおんなじことを繰り返している自分に嫌気がさす近藤。そんな近藤をまっすぐ見つめるあきら。そしてその口から出た言葉は――
第11話『叢雨(そうう)』
深まる秋、陸上部ではあきらと同じ怪我をしたにも関わらず復帰した他校の選手の話題で持ちきりになっていた。そんな日の帰り道、雨宿りをするはるかの前をあきらが通り過ぎる。話しかけようとするがタイミングが合わず、ついにはるかはあきらにある事を告げる為、思い切った行動に出る。一方、急にアパートにやって来たちひろと語り合った近藤は、己の中にある小説への想いの正体を掴み始めていた。あきらと近藤。まだぬかるんだままの道へと一歩踏み出すのは――。
第12話(最終回)『つゆのあとさき』
放課後の学校に響く学生達の声。冬へと加速する季節とは正反対に、青春は温度を上げ、17歳の心をかき乱す。全てが少しずつ変わっていく中、自分だけが取り残されたように感じるあきら。一方、近藤は本社とガーデンを忙しく行き来し、家では夜通し原稿用紙に向かっていた。あきらは近藤を想い、近藤はあきらを思う。二人の視線が交わった時、17歳と45歳がたどり着いた明日にあるものは・・・