第1話『グッドモーニング SAGA』
その生きる屍は、ある洋館でひっそりと目覚めた。それはただ、自分が誰かも、その場所がどこかも、何もわからぬまま、徘徊するのみ。やがて生きる屍は、恐るべき現実を目の当たりにし、自らの運命を告げられる。偽りの仮面をかぶり、闇の中を歩き続けるしかないのだと。そして、生きる屍に天からの光が差した時、人々は聞くだろう。狂乱の中に響き渡る叫びを。その、破滅の叫びを。―――――《巽幸太郎》の日記より
第2話『I♡HIPHOP SAGA』
ただのゾンビィだったメンバー全員が自我に目覚め、《さくら》も安心したようだ。ようやくここからアイドルグループとしての活動を始められる。まずは、あいつらにゾンビィバレをした時の恐怖を叩きこまなければ。グループ名も『デス娘(仮)』だと方向性が偏りそうなので、今変えてしまおう。思い付かないので、今度にしよう。あとは、アイドルグループにふさわしい初舞台の用意だ。何か良いイベントはないものか。―――――《巽幸太郎》の日記より
第3話『DEAD OR LIVE SAGA』
佐賀城でのイベントも想定通りに盛り上がった。《さくら》と《サキ》の爆発力もなかなかだったが、盛り上げに徹した《ゆうぎり》と《リリィ》もさすがに肝が据わっている。《たえ》はあれでいい。が、どうも全体的にアイドルっぽさが足りないので、強引にアイドルっぽい感じのやつをやらせるとしよう。経験者の《愛》と《純子》が引っ張れば、全く問題ないはずだ。ワンフォーゾンビィ! オールフォーゾンビィ!―――――《巽幸太郎》の日記より
第4話『ウォーミング・デッド SAGA』
グループ名は俺に何の断りもなく『フランシュシュ』になったらしい。リーダーもいつの間にか《サキ》に決まっていた。改めて俺がプロデューサーだと分からせた方がよさそうだ。とは言え、自主的に行動するようになったのは悪いことではない。ここはちょっぴりやる気を出したおしゃべりゾンビィ達に、がっつり稼いでもらうとしよう。というわけで、温泉へ営業に行かせます。メイクが取れてゾンビィバレでもしたら、一巻の終わりだな。―――――《巽幸太郎》の日記より
第5話『君の心にナイスバード SAGA』
あいつらは俺の想像を簡単に超えてくる。製薬会社とのタイアップのチャンスを見事に潰してくれた。だが、そこはこのプロデューサー巽幸太郎、今回は誰もが知っている超有名企業のCM出演権を手に入れてきました。『フランシュシュ』は佐賀一帯にその名声を轟かせるだろう。泥にまみれた不死鳥は、大空へと羽ばたく。―――――《巽幸太郎》の日記より
第6話『だってセンチメンタル SAGA』
『フランシュシュ』にもファンがついてきた。これもひとえにプロデューサー巽幸太郎の手腕。ここらでひとつファンとの交流を持たせ、その心をガッチリ掴ませよう。普段はデジタルを駆使しても、アナログな繋がりの強さを忘れてはならない。実際にファンを目の前にすれば、ゾンビィどものなかよしチームワークも強まるはず。完璧。シャワーを浴びる。―――――《巽幸太郎》の日記より
第7話『けれどゾンビメンタル SAGA』
野外音楽イベント【サガロック】への出演が決まった。だが相変わらず《純子》のやつがうじうじナメクジみたいになっている。サングラスが曇るの、あいつのせいじゃないだろうな。メンバーたちは不安そうだわ、《愛》にかかるプレッシャーは強くなるわ……【サガロック】当日の天気予報は雷雨か。文字通り雲行きが怪しくなってきた。とりあえず、潤いが欲しいので今日は寝る。―――――《巽幸太郎》の日記より
第8話『GOGO ネバーランド SAGA』
臭い蓋を開けてみれば、【サガロック】でのステージは成功に終わった。止まない雨はない。蘇らないゾンビィもいない。『フランシュシュ』の名もだんだんと知られてきた。ただし、有名になれば、当然ヘンな輩に目を付けられる可能性も大きくなる。まさかあの男がきっかけで、やーらしかゾンビィたちが重大な事実を知ることになるとは。ゾンビィたちよ、何があろうと、明日に歌え!―――――《巽幸太郎》の日記より
第9話『一度は尽きたこの命 なんの因果か蘇り 歌い踊るが宿命(さだめ)なら 親友(とも)への想いを胸に秘め 貫くまでよ己の SAGA』
突然ですが、少子高齢化社会です。これからはサガのご老人たちにも『フランシュシュ』のファンになってもらわなければならない。おじいちゃん、おばあちゃんが会いに来るアイドル。素晴らしいと思いませんか。イベントでの挨拶も、わかりやすくするか……「『フランシュシュ』はいつでもアクセル全開! 老若男女に向けたアイドル活動を行ってまいります!」いや、もっと端的に、「ゾンビィのとこ、こないか?」―――――《巽幸太郎》の日記より
第10話『NO ZOMBIE NO IDOL SAGA』
ご老人たちだけでなく、やんちゃなファンも増えたようだ。優秀なプロデューサーのおかげで、ゾンビィ達も死んでいるにしてはスクスクと成長している。そんなぎゅーらしかゾンビィ達に、新たなステップを踏ませてやることにした。これは、あいつらが必ず登らなければならない大きな山だ。そしてその頂へ向かうためにすべきことは、一つしかない。―――――《巽幸太郎》の日記より
第11話『世界にひとつだけの SAGA』
やりおった。《さくら》が事故りおった。どうやら生前の記憶が戻っているらしい。あいつ、元の性格がめちゃくちゃだ。(※中略)他のじっぱかゾンビィ達は《さくら》を元に戻そうとしているようだが……(※中略)とりあえず、明日が欲しいので今日は寝る。追記:寝付けない。コーヒーを飲み過ぎたか。―――――《巽幸太郎》の日記より
第12話(最終回)『グッドモーニング アゲイン SAGA』
《さくら》の記憶が戻らない。まったく「持っとらん」「持っとらん」とうらめしかやつだ。だが、ここで諦める巽幸太郎ではない。自分を信じろ。俺は必ずアルピノのステージに『フランシュシュ』を立たせる。そこからがプロジェクトの本当の始まり。『ゾンビィランドサガ・プロジェクト』の始まりなのだ。―――――《巽幸太郎》の日記より