第1話『事実は小説よりも奇なり』
某月某日秋。俺、高橋美咲はなんの因果か超ウレウレ小説家・宇佐見秋彦大先生に、家庭教師をしてもらうことになってしまいました…。 兄チャンの親友だから仕方ないとはいえ、あんなことやこんなことやそんなことも全部、正直かなり気にくわない! なんで俺がこの人に勉強教わらないといけないわけ? 兄チャン…俺、ちゃんと大学合格できるんでしょうか…?
第2話『後悔先に立たず』
なんとか無事(?)に大学生になった俺、高橋美咲は兄ちゃんの友人である宇佐見秋彦大てんてー宅に居候中。ちなみに宇佐見大てんてーは、兄ちゃんに「ウサギ」って呼ばれているんで俺もそう呼ぶことにしました。とはいえ、ウサギさんはハッキリ言って本当に「変だ」。寝室はオモチャだらけ。しかもクマのぬいぐるみに「鈴木さん」という名前までつけていて…!?こいつのせいで大学で友達一人できない俺だったけれど、ようやく…。
第3話『叩けよさらば開かれん』
大阪にいる兄ちゃん元気ですか? 俺、高橋美咲は兄ちゃんに迷惑かけないようにバイトも勉強も頑張らなきゃ!とは思っているんですが、厳しいって知らずに「鬼の上條」って生徒に呼ばれている助教授の授業を取ってしまって……大変なことになっています…。寝るとチョークが飛んでくるし、宿題地獄で死にそうになるし、ウサギさんや兄ちゃんと同じ歳くらいらしいんだけど、ホント「鬼」みたいでさ。あんな人に彼女とかいるのかなぁって、角先輩と話していたんだけど……。
第4話『案ずるより生むが易し』
兄ちゃん元気ですか? 俺、今日初めてウサギさんの担当編集をやっている丸川書店の相川さんって人に会いました。それも……初対面で微妙なところを見られてしまってマジで最悪です……。そうそう、ウサギさんってさ、兄ちゃんにも内緒で「秋川弥生」という名義でボーイズラブ小説を書いているだよ?……って、うわっ!ウサギさんせっかく兄ちゃんに書いた手紙破るな!つか、バレたくないなら書くなよ!!
第5話『会うは別れの始め』
兄ちゃん大変です…。例の助教授が、授業中に超不機嫌で恐ろしい形相で「高橋美咲、ここを読め」と俺を指名してきたんで、突然のことにパニックしていたら「それくらいも読めないのか」と言って、またもや山のような課題を出しやがったんだ……。どうやったらこの課題が終わるのか、教えて欲しいんだけど……つか、何があったか知らないけどさ、上條助教授も機嫌が悪いのを生徒に当たらないで欲しいよな!と思った今日この頃でした!
第6話『禍転じて福となす』
兄ちゃん、今日は夕方から雨が降ってきて、傘を持っていなかった俺はさんざんな目に遭いました…。天気予報じゃ雨が降るなんて言っていなかったと思うんだけどな。おまけにウサギさんが迎えにきてくれたらしいんだけど、こんな日に限ってすれ違っちゃったせいで、服も靴も鞄もびしょびしょ。やりかけのレポートまで濡れちゃって、やり直すハメになりました…あーあ…。
第7話『可愛い子には旅をさせよ』
ウサギさんの家に居候を始めて早二ヶ月弱。大学にもようやく慣れてきたしなんとか勉強もバイトも頑張っているんだけど、最近またもや困ったことが起きました。だってさ、ウサギさんが担当編集の相川さんと一緒になって、俺にBL小説のシチュエーションを選ばせようとするんだよ…。俺にわかるわけがないじゃん! それに下手に選んだら何が起きるかわからないし……。
第8話『旅の恥はかき捨て』
もうすぐ夏休み。夏休みになったらなにしようかなー。ウサギさんのゴハン作って、ウサギさんのクマの鈴木さんのリボンかえて、ウサギさんへの原稿の催促の電話に謝って、ウサギさんが行き倒れないように…って! これじゃいつもと同じじゃねーか! 俺の素敵な夏休みは本当に来るのかな……。
第9話『情けは人の為ならず』
兄ちゃん…今日は苦情があります。あのさ、俺の小さい頃の写真をウサギさんに送ったり渡したりするの止めてくれないかな? ウサギさんのパソコンの中になぜか写真があったんだけど、兄ちゃんしか犯人…いや、俺の写真持っている人いないじゃん? 悪用されたりしたらマジで困るしさぁ……。
第10話『少年よ大志を抱け』
今日、大学の授業で松尾芭蕉についてをやりました。松尾芭蕉って小学生の頃の国語の授業でやったっきりな気がするんだけどさ。この授業の教授、大学教授にしては若いのに、松尾芭蕉マニアでかなり有名な人なんだって。授業に関係ないことまで当たり前のように話すから、試験に何が出るかわからなくて怖いって先輩に聞いて、今から嫌な予感満載だったりするんだけど……。
第11話『好きこそものの上手なれ』
兄ちゃん、俺もう進級ヤバイかもしれません…。だって、入学早々だけど授業の内容がよくわからないんだ……。松尾芭蕉についてのかなりマニアックな授業をうっかりとっちゃったんだけど、周りの奴らも全然授業について行けてないみたいでさ。この授業の履修って俺じゃなくても不可能なんじゃないかって思うんだけど……。
第12話(最終回)『袖すり合うも他生の縁』
兄ちゃん、どうしてこの世の中には本ってゆーものがあるのかな? 昔はさ兄ちゃんが読み聞かせてくれたりしたから何とかなっていたけど、なんか俺、活字を読み出すと物凄い眠気や目眩に襲われるんだよね。これって病気なのかな? このままだと俺、一生ウサギさんの本は読めないと思うんだよね。あ、でも漫画は読めるよ!今度俺のオススメ「ザ☆漢」を兄ちゃんにもかすね!